『試験に出る数学実戦公式集』<おすすめの本 No.003>

今回紹介する本は,

試験に出る実戦公式集(1977年初版, 安富龍平, 青春出版社)

です. 作者の安富先生は日比谷高校で教鞭をとっていた数学の先生で「丸暗記した公式では役に立たない」と言うことをモットーにこの本を上梓されました.

数学で必要な公式を完璧に暗記しても試験に少しでも変形して出されるとても足も出ないこれが受験生の弱点であり, この部分を何とか補強できないかと考えて生み出されたのがこの本です. 例えば, 最初の因数分解のところでは次のような記述が見られます.

①共通因数
$\bm{ma-mb+mc=m(a-b+c)}$
注意1 公式にすると簡単であるが, 注意すべきは, この $m$ なり, $a$ なり, $b$ なり, $c$ なりが, 大きなかたまりになるときである.

試験に出る実戦公式集(1977年初版, 安富龍平, 青春出版社) P.17より

とあります. これは次のような問題を解くときに役立ちます.

問題

次の式を因数分解せよ.

$x^2y+x^2-xy^2-xy+y^2-1$

解答
\begin{align*}
&x^2y+x^2-xy^2-xy+y^2-1 \\
=\;&(y+1)x^2-\left(y^2+y\right)x+\left(y^2-1\right) \\
=\;&(y+1)x^2-y(y+1)x+(y+1)(y-1) \\
=\;&(y+1)\left(x^2+yx+y-1\right) \\
=\;&(y+1)(x-y-1)(x+1) \\
=\;&(x+1)(y+1)(x-y-1)
\end{align*}

となります. 途中で共通因数 $y+1$ をおおきなかたまりとして処理していることがわかります. ちなみに最後の因数分解はたすき掛けです. このように共通因数でくくる場合,

$ax+ay=a(x+y)$

は簡単にできますが,

\begin{align*}
&ax+ay+a+bx+by+b\\
=\;&(a+b)(x+y+1)
\end{align*}

は初学者はなかなか気づきません. ここをうまくフォローした形になっており, 一般的な公式集でないことがわかるかと思います. 「試験に出る実戦公式集」は随所にこのようなポイントがあるわかりやすい公式集になっています.

以下のリンクはAmazonのレビューですが, 当時から愛用されていたことがよくわかります.

この本, 1冊で定義〜の全てを理解しました. 20年以上経過してますが, いまだに手元から放すことのできない本です. 息子用に探しましたが, 絶版なのがとても残念です. 類書をお探しの方には公式集(モノグラフ)をオススメします. これしかありません.

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RCKB0431OC7LA/ref=cm_cr_arp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4413002938より

ちなみに「試験に出る実戦公式集」は何度か改訂が繰り返されています. おそらく学習指導要領改定のタイミングで出ているんだと思います. Amazonで調べて見たところ,

  • 試験にでる数I数IIB数III(1976年)
  • 試験にでる数学実戦公式集―これが見えないカギだ(1977年)
  • 現行課程による決定版 試験にでる数学―このポイントが、あなたに奇蹟を起こす(1989年)
  • 試験にでる数学実戦公式集(1991年)

などが出版されています.

私はこの中で1つ目と2つ目を持っていますが, 中身自体はかなり違います. そもそもコンセプトがっており, その違いを見ていくと, 「試験に出る実戦公式集」は公式が出ていてそれを補足する形で説明がされていることが多いです. 上の因数分解の公式もその形をとっています.

一方, 「試験にでる数I数IIB数III」は解法について焦点を当てています.

  • 出題者にはどんな意図があったのか
  • 難問へのアプローチ
  • 教科書にもなかった解法
  • データが示す誤答の実例

など, 単元別の切り口ではありません. 例えば, 最初のほうは,

問題

f(x)$ が $x$ の2次関数で,

$0<f(0)<1$,
$1<f(1)<2$,
$2<f(2)<3$

のとき, $f(3)$ の値の範囲を求めよ.

というものです. 「試験にでる数I数IIB数III」では1つの方法に固執するなという方針のもと, どのような解決方針を立てるべきかというところから解説が始まります.

念のため, 解答を示しておきます.

$f(x)=ax^2+bx+c\;(a\neq 0)$

とおくと, $f(0)$, $f(1)$, $f(2)$ の取りうる値の範囲はわかってますので, そこから

$0<c<1$,
$1<a+b+c<2$,
$2<4a+2b+c<3$

が得られます. あとは, この3式から,

$f(3)=9a+3b+c$

のとりうる値の範囲を求めれば答えを求めることができます.

ここからは詳しい解答は省略しますが, 第1式, 第2式, 第3式をそれぞれ $1$, $-3$, $3$ 倍して, 辺々を加えれば,

$0<f(3)<7$

が得られます.

話をもとに戻すと, 出版が確認されている4冊の本は, 本の名前や持っている2冊の違いから考えると,

試験にでる数I数IIB数III(1976年)を改定したものが, 試験にでる数学実戦公式集(1991年)

試験にでる数学実戦公式集―これが見えないカギだ(1977年)を改定したものが, 現行課程による決定版 試験にでる数学―このポイントが、あなたに奇蹟を起こす(1989年)

なんだと思います. (実際のすべての本を見ているわけではないのでわかりませんが.)

一般的に公式集の名がつくものは無味乾燥なイメージで実際の問題でどう利用すれば良いのか見えてこないものが多くあります. しかしこれは読んでいると, どのような問題で使うべきかイメージができ, 実際に利用してみたくなります. このような本はなかなかありません.

ただ, 残念ながら今は絶版で手には入りません. Amazonで見てみると2020年6月14日現在で

試験に出る実戦公式集」のほうは100,000円の値

がついています. これはさすがに高過ぎませんか. 笑.

ちなみに, 1984年頃に安富先生は東京都立武蔵村山高等学校の校長に就任されているようです. (未確認です.)

また, 作者は違いますが同じ出版社から,

高校への数学(1978年, 勝山正躬監修, 片岡秀彦著, 青春出版社)

という本も出版されています.

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