『記述式答案の書き方-数学I・A・II・B』<おすすめの本 No.004>

今回私がおすすめする本は,

総合的研究 記述式答案の書き方-数学I・A・II・B(2018, 﨑山 理史・松野陽一郎, 旺文社 )

です. 著者の﨑山 理史先生, 松野陽一郎先生はともに開成中学校・高等学校の先生です.

初めてまだ売られている本を紹介するような気もします.

数学を教えていると,

子どもたちは記述が書けない

と教える側の中で話題になることがあります. 子どもたちの答案を見てみると,

  • 途中経過を書かずに答えのみ
  • 文章を書かずに式の羅列
  • 誤った記号の使い方
  • 同値変形になっていない(これは恐ろしいほど多い. 何でですかね.)

などの間違いが多く, 話題になるのもうなずけます. ただ一方で,

自分たちが記述答案の書き方をちゃんと教えているのか?

と自問自答するときがあります. こちらがちゃんと教えていて書けないのであればそれは話題にしても良いですが,

教えていないのに書けないと嘆くのはダメ

です.

答案の書き方についての具体例を見ていきます. 例えば, 次の答案はどうでしょう. おそらく多くの数学を教えている人が出会う答案なのではないでしょうか.

問題

次の等式を証明せよ.

$\left(a^2+b^2\right)\left(c^2+d^2\right)=\left(ac+bd\right)^2+\left(ad-bc\right)^2$

余談ですが, 上の等式はブラーマグプタの恒等式と呼ばれています.

解答?

与えられた等式を変形すると,

\begin{align*}
&\left(a^2+b^2\right)\left(c^2+d^2\right)\\
&\quad=\left(ac+bd\right)^2+\left(ad-bc\right)^2 \\
&a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2 \\
&\quad=a^2c^2+2abcd+b^2d^2 \\
&\qquad+a^2d^2-2abcd+b^2c^2 \\
&a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2 \\
&\quad=a^2c^2+b^2d^2+a^2d^2+b^2c^2 \\
&a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2 \\
&\quad=a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2
\end{align*}

上の答案では文章になっていますので, まだ良いほうで, 式の羅列だけの場合も多いです.

解答?

\begin{align*}
&\left(a^2+b^2\right)\left(c^2+d^2\right)\\
&\quad=\left(ac+bd\right)^2+\left(ad-bc\right)^2 \\
&a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2 \\
&\quad=a^2c^2+2abcd+b^2d^2 \\
&\qquad+a^2d^2-2abcd+b^2c^2 \\
&a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2 \\
&\quad=a^2c^2+b^2d^2+a^2d^2+b^2c^2 \\
&a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2 \\
&\quad=a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2 \\
&\quad 0=0
\end{align*}

よって, 成り立つ.

(スマホで表示されることを意識して数式を折り返してます. 見にくくてゴメンなさい. )

これはすぐにダメだとわかります. その場で子どもたちに説明したり, テスト返却の際に解説を書いたりします. または, 経験則から初めて教える段階でこういう書き方はダメだと指導される方も多いでしょう.

このように答案の書き方については

教える側の多くはダメな書き方の具体例を含めた蓄積を持っている

はずです. それと同時に

「答案の書き方」は子どもたちに教えようとすると意外と難しい

もの.

例えば, 次のような問題の解答も教える側からすると違和感がありますが, それがなぜいけないのか上手に説明しようとすると一瞬止まりませんか?

問題自体は『記述式答案の書き方のものではありませんが, よくない答案の書き方は真似させてもらいました.

問題

$x=2$ であるとき, $x^2-4x$ の値を計算せよ.

解答?

$x=2\Longleftrightarrow x-2=0$ であるから,

\begin{align*}
(x-2)^2=0& \Longleftrightarrow x^2-4x+4=0 \\
& \Longleftrightarrow x^2-4x=4
\end{align*}

などのように, 子どもたちに,

どう説明したら「この書き方ではダメ」とわかってもらえるだろう

と一瞬悩むようなものに関しても明確な説明がなされているのが『記述式答案の書き方です.

今まで何冊かの答案の書き方なる本を読んできましたが, この『記述式答案の書き方は圧巻です. 惚れ惚れしました.

教えている側が直感的に違和感に感じていたことなども上手に説明されており, 初めて見たときはよくここまで書けたものだなと感動.

『記述式答案の書き方全体を通して, 﨑山 理史先生・松野陽一郎先生の持っている豊富な具体例・知識をもと, 良い答案と悪い答案を比較しながら, なぜいけないのか丁寧に説明がされています.

『記述式答案の書き方の目次を

から引っ張ってくると,

■第1部 よい答案への第一歩
第1章 答案作成ことはじめ
第2章 答案を読んでもらうために
■第2部 答案での基礎的な表現
第3章 根拠を述べるための言葉遣い
第4章 等式を用いた計算の書き方
第5章 数式の位置づけの明示
■第3部 条件の言い換え
第6章 条件の扱い方
第7章 同値記号の使用について
■第4部 記述式答案の書き方・実践編
第8章 いろいろな証明の記述
第9章 条件の同値な言い換えの具体例
第10章 不等式と変数のとりうる値
第11章 軌跡・領域
第12章 対称性の利用

https://www.obunsha.co.jp/product/detail/037724より

となっています. どの章も読み応えがありますが, 『第7章 同値記号の使用について』などはそうそうと思いながら読んでいました.

そもそも『記述式答案の書き方は本屋でたまたま見かけただけでした. タイトルに惹かれて何となく中を見て, 思わずその場で購入. 出会ってから数分しか経っていなかったんですけどね. おまけになぜかもう一冊買って我が家には2冊あります. 笑.

このように, 内容的には申し分ないです. ただ, 子どもたちが読むには少しレベルが高い気もしますが, 根気強く読めば十分理解できるはずです. そもそも勉強はそういうものだとも思っています. 教える側が持っていても役立つので本当におすすめです.

しかも今回は絶版本の紹介ではありませんので, 購入することもできます!

また, 数学が苦手だという方は, 2019年に出版された

木村雅一の数学の記述答案が面白いほど書ける本(2019, 木村雅一著, KADOKAWA)

もおすすめです. 木村雅一先生は河合塾の先生です.

『記述式答案の書き方より平易に書かれています.

ではまた.

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